ノーウッドの建築業者 THE NORWOOD BUILDER
ストーリー
新進の青年弁護士マクファレンが、血相を変えて、221Bのホームズに助けを求めに来た。ノーウッドで起きた放火殺人の容疑者として、自分の名前が新聞に載っていたのだ。現場に残された血の付いたステッキから、マクファレンが容疑者だと睨んでいたロンドン警視庁のレストレード警部も、221Bにやってきて、ホームズに容疑者引渡を要求するが、ホームズはマクファレンの話を聞くよう諭す。
マクファレンの話によると、これまで面識が全くなかったオールデーカが昨日いきなり事務所にやって来て、正式な遺言証を作ってくれと頼んだ。遺言証の中身を見ると、マクファレンに財産の大半を譲るという。真意を問い糾すと、かつて愛していたマクファレンの母が別の男性と結婚して、その後その男性が死んで、息子のことが気になりだした。既に建築業は引退し財産もあるが、独り身で親類にやるのも嫌なので、一部を除いてかつて愛した女の息子に全財産を譲りたいという。
遺言書の清書を持ってノーウッドのオールテーガ邸に出向いたマクファレンは、最後の仕上げとして遺言書に蝋で封をする。帰る間際になって父の形見のステッキを紛失したが、これから度々会う間柄だから見つけたら預かっておくと言われ、そのまま近くの宿に帰宅した。その翌日、オールデーカが放火殺人で殺され、自分に容疑がかかっている事を新聞で知ったというのだ。
ホームズは遺言書の原本を見るが、文字のほとんどが乱れていることから、列車の中で書かれたと推測する。書いた本人が重要とは思ってない遺言書の真意は何なのか、ホームズとワトスンは、ブラックヒースのマクファレンの母の元に赴き、オールデーカとの成り行きを聞き出すが、結婚式に送った写真をズタズタに切り裂いて絶対に許さないと送り返し、その写真を見つけたマクファレンが父から或る程度の真実を聞いていたということだった。その件は犯行の動機として法廷で取り上げられるとホームズは心配するが、マクファレンの母は「神がお守り下さる」と冷静を保つ。
ノーウッドの事件現場に赴いたホームズ達は、レストレード警部と捜査を競い合うことになる。ワトスンの調べで、オールデーカには遺産が全くないことが分かったホームズは、屋敷の周りの探索に当たる。そんな中、レストレード警部からマクファレンが犯人である決定的な証拠を見つけたとの電報が届く。レストレードの勝利宣言に失望しつつも、ホームズとワトスンはノーウッドへと赴くが・・・。
準主役級のコリン・ジェボンズが登場
レストレード警部役のコリン・ジェボンズが初めて登場する回です。その後ジェボンズは「空き家の怪事件」「第二の血痕」「六つのナポレオン」「犯人はふたり」などにも準主役級で出演します。
本編ですが、かつて愛した女の息子に、独り身で親類に渡したくないために全財産を譲るというのは十分理解できる行為ですが、その裏にあくどい動機が隠されていようとは、というお話です。レストレード警部とは好敵手ですが、最後にはいつもホームズに深い尊敬の念を抱いていて好感が持てます。特に「六つのナポレオン」では、レストレードの好漢ぶりが伺えます。