シャーロック・ホームズの冒険データベース

グラナダTV版シャーロックホームズ & ジェレミー・ブレットファンサイト

シリーズ構成

THE ADVENTURES OF SHERLOCK HOLMES 第1~第2シリーズ

第1シリーズと第2シリーズの「THE ADVENTURES OF SHERLOCK HOLMES」は全13話から成ります。「ボヘミアの醜聞」「曲がった男」「まだらの紐」「青い紅玉」など、コナン・ドイルの一般によく知られた代表作ばかりの豪華なラインナップとなっています。テレビ版では「シャーロック・ホームズの冒険」というタイトルになっていますが、ドイルの原作「シャーロック・ホームズの思い出」や「シャーロック・ホームズの帰還」からも物語が幾つか採用されていて、その辺りにはこだわりはないようです。

はじめのプランでは「四人の署名」を第1話に持ってくるということだったらしいですが、他のテレビ局で同じ話をやるということで、「ボヘミアの醜聞」がグラナダテレビ版シャーロック・ホームズの記念すべき第1作を飾ることとなりました。もし「四人の署名」が第1話に設定されていたとしたら、メアリ・モースタンがワトスンの妻という準主役の形で、その後のストーリーにも奥行きが出てきたのかもしれないと想像すると、第1作を「四人の署名」で飾れなかったのは少々惜しい気もします(後に「四人の署名」は2時間の長編ドラマとして映像化)。

犯罪界のナポレオンと異名を取るモリアーティ教授との格闘でライヘンバッハの滝壷に転落した「最後の事件」で第2シリーズは幕が閉じられ、ワトスン役のデヴィッド・バーグは家庭の事情からスケジュールが合わなくなり降板、代わってエドワード・ハードウィックがワトスン博士役を受け継ぐことになります。

THE RETURN OF SHERLOCK HOLMES 第3~第4シリーズ

第2シリーズの終了から1年後の1986年に、第3シリーズの「THE RETURN OF SHERLOCK HOLMES」が再開されます。「空き家の冒険」「六つのナポレオン像」「マスグレーブ家の儀式書」「第二の血痕」など、ジェレミーはホームズを演じることを楽しんでいるように見えます。1986年に最愛の妻を癌で亡くしたジェレミーは憂鬱状態に陥り、スタッフが心配して病院に診に行かせたほどでしたが、困難を乗り越えたジェレミーが、より魅力的で人間的なホームズを演じたことを、その後の映像が証明しています。

1988年に放映された「THE RETURN OF SHERLOCK HOLMES」の第4シリーズでの、若干内省的で異様な内面が見られる「悪魔の足」は、病気療養でコーンウォールの別荘に訪れるという設定になっていて、ジェレミーの健康状態をそのままドラマの中でも彷彿とさせます。

ところでこの第4シリーズ、ジェレミーはトレードマークとなっていた髪を短く切ってイメージチェンジをしています。その後もジェレミーはこの稀代の名探偵を演じ続けることになります。

THE CASE-BOOK OF SHERLOCK HOLMES 第5シリーズ

第5シリーズの「THE CASEBOOK OF SHERLOCK HOLMES」(1990年)では、「ボスコム渓谷の惨劇」「這う人」「ショスコム・オールド・プレイス」などを見ても分かるように、初期の頃と比べて動きがどこかまったりとしていて、ジェレミーがあまり行動的には映らず、映像も、鮮明になった分、懐古調に色を落としている感があります。それでも「高名な依頼人」などはドラマチックな方で、ホームズの悪漢との格闘と手酷くやられる刺激的なシーンを見ることができます。前シリーズでは短髪になりましたが、第5シリーズでは髪も元に戻っています。

長編三部作

第5シリーズと第6シリーズの間に、プロデューサーのジューン・ウィンダム・デイヴィスの指揮の下、2時間物の長編三部作のプランが動き始めます。「恐喝王ミルヴァートン(グラナダ原題:恐喝王)」「サセックスの吸血鬼(グラナダ原題:最後の吸血鬼)」「独身の貴族(グラナダ原題:結婚するのにふさわしい貴族)」が立て続けに制作されましたが、この三作は元々は短編で、スペシャル版として、原作からかけ離れた様々な脚色を加え、2時間の長編物に引き延ばされました。

タイトルも、コナン・ドイルの原題は放棄されて、グラナダテレビ版独自のタイトルが採用されています。「恐喝王ミルヴァートン」では以前の颯爽としたジェレミー・ホームズが戻ってきました。

これまで原作に出来る限り忠実だったグラナダ版シャーロック・ホームズは、この頃から、原作にかなりの改変を加えた作品へと脱皮していきます。特に次に紹介する第6シリーズは、これまでの上品で落ち着いたビクトリア調ドラマとは違い、色も派手派手しく、絢爛豪華で、配役などにも様々な仕掛けが成されています。

人気シリーズも長く続けていくとマンネリ感が出てしまうので、視聴者を喜ばせるためにも奇抜さを求めていく方向に入ったのかも知れません。映像も極めて鮮明になり、より現代風に沿った作品の仕上がりとなっています。

THE MEMOIRS OF SHERLOCK HOLMES 第6シリーズ

第6シリーズになると、ジェレミーの健康状態があまり思わしくないことが全体的な演技からはっきりと見て取れます。ジェレミーの深刻な病状の為か、かなり重苦しい雰囲気が前編に渡り、垂れ込めています。

「マゼランの宝石」を収録する段になって、ジェレミーの健康状態が収録に適さないほど悪化し、代役として、マイクロフト・ホームズ役のチャールズ・グレイが抜擢されることとなりました。

このアクシデントが、皮肉にも「マゼランの宝石」を、主役のジェレミーがストーリーの始めと終わりにしか登場しないという、これまでのシリーズにはないユニークな作品に仕上げることに貢献しています(ちなみに「マゼランの宝石」は「ガリデブが三人」を組み込んで2話で一つの作品を構成しているという点でもユニークなものとなっています)。