シャーロック・ホームズの冒険データベース

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高名の依頼人 THE ILLUSTRIOUS CLIENT

ストーリー

サー・ジェームズ・デマリー大佐の友人の娘バイオレット・メルビルが、グルーナ男爵との婚約を控えていた。グルーナ男爵は残忍な性格で、自分の妻をスイスとオーストリアの国境で殺害したとの噂が持ち上がっていたが、バイオレット・メルビルは全く意に介さない様子だった。高名な依頼人の名を明かさないデマリー大佐から二人の仲を裂くよう依頼されたホームズは、グルーナ男爵の邸に赴き、手を引くよう宣戦布告をする。

殺人疑惑で動じないのなら、些細なことで彼女をグルーナ男爵から引き離せられるかもしれないと考えたホームズは、暗黒街に通じている肉屋のシンウェル・ジョンスンに頼んで、キティ・ウィンターなる女性を紹介される。

キティは習作画のモデルだったが、かつてグルーナ男爵の愛人だった頃、ベッドの中で或る日記帳を読めとせがまれて拒むと、硫酸を浴びせられてモデルの出来ない体にされた。その鍵のかかった日記帳にはこれまでに付き合った女性の写真や名前、その他諸々のことが記載されていたのだという。いわば蝶の標本のように女性をコレクションしていた。

キティとジョンスンがグルーナ男爵の手先に襲われるが、返り討ちにする。やがてホームズ自身にもグルーナ男爵の魔の手が伸び、二人の悪漢に襲撃されて大怪我を負った。体を気遣うワトスンだったが、予想よりも容態は良く、新聞に危篤の状態だと書かせてグルーナ男爵を油断させる。

近々グルーナ男爵がアメリカ合衆国に旅立つことを知ったホームズは、ワトスンにこれから24時間中国の陶磁器について勉強するよう頼む。グルーナ男爵は無類の陶磁器コレクターで、国王の身代金ほどもある陶磁器の一対をデマリー大佐から借りたので、これをグルーナ男爵に持ち込んで足止めを計ろうとしたのだった。ワトスンは別人に化けて、グルーナ男爵の邸に訪れ、ホームズが日記帳を見つけるまで時間稼ぎを試みるが・・・・・・。

こてんぱんにやられてしまうホームズ

「高名の依頼人」はグラナダシリーズの中でも、注目に値するドラマのひとつです。何せあの無敵のホームズがメッタメタにやられてしまう、衝撃的な暴力シーンがあります。

今回はワトスンが時間稼ぎのために頑張りますが、陶磁器についての質問をされ、ワトスンだと見抜かれて呆気なく手を挙げる演技が何とも愛くるしいです。嘘をついていてバレそうなときのゾクゾク感も共有できます。原作では、君の詰め込み勉強ではあれくらいが限界だと思っていたからね、とホームズが言う場面がありますが、再現はされなかったようです。

冒頭のオープニング音楽は、スイスの山から始まるためか、「アルプスの少女ハイジ」で耳にするような音楽が最後に付け足されています。なかなか芸が細かいです。

今回はマイエンジェル、だとかマイダーリンだとかいう台詞が頻繁に出てきます。それもグルーナ男爵演じるアンソニー・バレンタインの口から。ヴィクトリア朝を舞台にした古風な推理ドラマ物とは似つかわしくない程の好色溢れる台詞です。モリアーティ教授、モラン大佐と来て、グルーナ男爵です。これまでとは一風変わった強敵で遜色ありません。キティ・ウィンター役のキム・トムスンのチャーミングな容姿にも惚れ惚れするばかりです。

最後に謎のままとなっていた依頼人を、デマリー大佐の乗っていた馬車の紋章から割り出したワトスンですが、ホームズは何も言うなと微笑みながら無言で諭します。あのゴチャゴチャした紋章の持つ重みは英国人だとすぐに分かるのかも知れませんが、日本人には説明がないと分かりづらいですね。

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