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レディー・フランシスの失踪 THE DISAPPEARANCE OF LADY FRANCES CARFAX

ストーリー

休暇を送っていたワトスンは、ホームズに休暇の様子を手紙で報せていた。ある日、行動的な女性として衆目を集めていたカーファックス嬢が、いつものようにヨットで帰還しようとすると、弾みで海に投げ出されてしまう。そこへボーア戦争で負傷した英雄で車椅子のシュレシンジャーが湖に飛び込んで、見事に彼女を助けたのだった。

シュレシンジャーは伝道会の募金活動を行っていて、カーファックス嬢も寄付しようと兄のラフトン伯爵を呼び寄せたが、酷い口論になったのを目撃する。また、顎髭の男が度々現れ、カーファックス嬢の前に現れたが、彼女は男を拒絶しているようだった。

ワトスンから一部始終を手紙で知ったホームズは、すぐさまその足でロンドン警視庁に赴き、伝道会やシュレシンジャーなる人物について調べ上げ、ワトスンにカーファックス嬢から目を離さないよう電報で警告する。ワトスンはカーファクス嬢を探したものの、すでにホテルにはいなかった。

ホームズ達は兄ラフトン伯爵に会い、コレクションの宝石をどこに保管しているのかを聞き出す。ペルメル街の海運銀行を教えられ、おそらくそこにカーファックス嬢が現れるだろうと出向くと、顎髭の男が現れ、ワトスンと一悶着を起こしたその隙に、銀行に訪れたカーファックス嬢に逃げられてしまう。

顎髭の男は、かつてのカーファックス嬢の恋人グリーンだった。シュレシンジャーなる人物はピータースンという詐欺師で、殺人者でもあることを調べ上げていたホームズは、宝石の売られた盗品売買の店を突き止める。

何かできることはないかとせがむグリーンに、店で見張るよう指示する。シュレシンジャーの妻が店にやって来て、後をつけると、葬儀屋で特注の棺桶の納品について話している所を目撃し、すぐさま221Bに引き返してホームズに行動を起こすようせがむが、法的手順に乗っ取らなければならないと突っぱねる。

その後ホームズとワトスンはシュレシンジャーの家に赴き、銃で脅して強引に部屋を捜索して棺桶を発見するが、中に眠っていたのは小柄な老婆で、妻が50年連れ添った乳母だった。ふたりはなくなく退散する。

自由奔放な女性なので、すぐに相手の正体が分かって逃げ出したんだろうとワトスンは納得させようとするが、腑に落ちないホームズ。チェスの駒を弄っているうちに、事件の真相が頭を過ぎる。

ホームズの失敗談で有名な短編

ワトスンの泊まっているホテルの壁が白いので、どことなくポワロの雰囲気が漂っています。映像もクリアになり申し分ないです。普段は暗いイメージ付きまとうホームズのドラマですが、ロケ地のせいか前半は明るいです。後半はいつもの暗いヴィクトリア朝ホームズに戻りますが、ラストシーンの墓場は明るいです。

他の回とはひと味変わった冒頭シーンで、ワトスンの手紙の朗読から始まります。ホームズはワトスンの手紙を手がかりに登場人物をチェスの駒に見立てて置いていくわけですが、このチェスの駒がラストで重要な役割を果たします。これもまた原作にはない粋な計らいです。このシーンがあるだけで、また何度も観たくなります。

今回はワトスンは「ソア橋の怪」とは対照的に失敗だらけです。ホームズ自身も最後は己の失敗を認め、深く悔います。しかし一見万能に見えるホームズが失敗するのは珍しいことではなく、初期の「ボヘミアの醜聞」でもアイリーン・アドラーに出し抜かれていますし、自身でも結構失敗が多いと何かの回で述べています。

他の事件でも依頼されたものの間に合わなくて依頼人が殺されたり、傷つけられたりしたことも幾たびかあります。話を成り立たせる為には欠せないから仕方がないといえばそうなのでしょうが、必ずしも万事成功するスーパーマンとは違うところが、超人ホームズの魅力でもあります。

今作のキーパーソンであり、タイトルにもなっているレディ・フランシス・カーファックスを演じるジェリル・キャンベルは、ジェレミー・ブレットに負けず劣らずのエキセントリックな演技で目を見張ります。女版ジェレミーといったところでしょうか。ジェレミーの向こうを見事に張っています。

他の見所は、冒頭ホームズがスコットランドヤードに向かい調べ物に没頭したり、221Bに帰宅後にすぐさま馬車を呼ぶシーンでしょうか。これらの目を見張るシーンは忘れがちで、久しぶりに見返してこんなシーンもあったのかと新鮮さを味わいました。

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