シャーロック・ホームズの冒険データベース

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金縁の鼻眼鏡 THE GOLDEN PINCE-NEZ

ストーリー

コラム教授の秘書ウィロビー・スミスが何者かに首を刺されて殺された。現場はコラム教授の屋敷の廊下で、スミスの手には加害者の物と思われる金縁の鼻眼鏡が握られていた。メイドの証言によると、スミスは死の間際、メイドの耳に「先生、あの女です」とダイイング・メッセージを残していた。

スタンリー・ホプキンズ警部に依頼されて捜査を開始したシャーロック・ホームズとマイクロフト・ホームズは、書斎の引き出しが荒らされていたのを発見したが、めぼしい物は入っていなかった。コラム教授の部屋を訪れて話を聞くが、要領を得ない。

アレキサンドリア煙草に目がない教授でホームズも勧められたが、マイクロフトは嗅ぎ煙草を愛用していたので遠慮した。ウィロビー・スミスと付き合っていた、村の女性参政権運動の指導者アビゲイル・クロスビーに容疑がかかる中、ホームズはコラム教授の部屋である異変に気づく。

ハードウィックのピンチヒッターで、チャールズ・グレイが再び登場する異色の作品

ワトスン役のエドワード・ハードウィックが、映画撮影のために出演できなくなり、ピンチヒッターとして兄マイクロフト(チャールズ・グレイ)が登場します。その為、オープニングクレジットでは、ハードウィックの名前が出るところが、チャールズ・グレイとなっています。原作の著しい改変部分となっていますが、大筋は原作に忠実です。

シーンの中に、ホームズの父について語られる箇所がありますが、原作では父についての記述は皆無だったと思います。「全ての不可能性を排除した後に残ったものは、たとえそれが非現実的で不可能なものに見えても、それが真実だ」という有名な台詞は、実はシャーロック・ホームズの父の言葉が起源だったという驚くべき脚色が成されています。

また、兄マイクロフトが取り出した拡大鏡を見て、「それは父さんの拡大鏡か?」と尋ねるシャーロックの台詞から、どうやら父は兄贔屓だったことが推察されます。これも脚本家の脚色ですが、原作には語られていない部分を拡大解釈してドラマ化する行為は、シャーロキアンを擽ります。特にその拡大解釈が、これまで原作に忠実だったグラナダ版で行われた場合には、くすぐり具合もひとしおです。

本編は、久々にホームズ物らしい謎解きの話になっています。シリーズの終盤になって、ようやくかつてのグラナダTVが戻ってきた様な感さえあります。冒頭ではなぜワトスンが登場していないのかハドスン夫人が説明役に回りますが、ロザリー・ウィリアムズがドラマの中で言った通り、ジェレミー自身も拗ねていたのでしょうか(笑)。

時代は20世紀で、エリザベス女王はすでにこの世に亡く、エドワード7世が皇帝の座に着いているようです。女性参政権運動の様子も描かれています。最後の嗅ぎ煙草の件は、ホームズがやったということにしておけとマイクロフトは示唆しています。脚本家の原作に対する配慮とも受け取れて面白いです。

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